Animal×Half(オリジ小説)
□7.『ちょっと強引な狼さん』
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…ハァ、なんでこんな町中で戦わなきゃなんないのさぁ…。
でも、グダグダ言ってる場合じゃないね!
僕は(諦め半分で)精神を集中させる。
その間、既に走り出したキーラは男Bとの間合いを詰めはじめていた。
槍は中距離でこそその真価を発揮する。
だからこそ相手の懐に飛び込むのだろう。
「ハラアァッッ!!」
しかし、完全に間合いを詰める前に横から男Aがキーラに斬りかかる。
その剣は月の光を受けて鈍く輝いていた。
「くっ…」/「大丈夫、そのまま行って!水よ…集まりて我等が盾となれ、シールド!」
無理に体勢を変えようとしたキーラを制し、僕は呪文を発動させた。
水の膜が展開され、キーラを剣から守る。
「サンキュ、ワタル!」
キーラは短くそう言うと、間合いを詰めながらも体勢を低くしていった。
「く、くそっ!」
キーラが完全に間合いを詰める前に、男Bが槍を振るう。
…が。
「Σ!?居ない!!」
そう。槍の先にはキーラの姿形も無かった。
「遅せぇんだよ…。空転脚(クウテンキャク)!」
ボゥオギィイ!!/「うぎゃあああぁあ!?」
辺りに何とも形容し難い音が鳴り響いた。
一瞬だった…。
男Bが槍を振るう直前、キーラは全身のバネを使い、空高くジャンプしていたのだ。
そのまま空中で一回転しながら、鋭い踵落としを男Bの肩に放っていた。
男Bは痛みの余り失神している。
…あれ、確実に骨折れた音だったもんねぇ…
「さぁて…と。後はテメェだけだな…あぁ?」
「ひっ…」
キーラはボキボキと指を鳴らしながら男Aへと詰め寄る。
「い、命だけは…!」
「この期に及んで命乞いかよ?…安心しろ。殺しゃあしねえよ。精々四肢の骨へし折るくれーだ。」
抑揚のない声で言うキーラ。
その目は酷く冷たい。
―が。
「…と言いたい所だが、今の俺はすこぶる機嫌がいい。見逃してやるからヘバッてる二人連れてとっとと失せろ。…行こうぜ、ワタル。」
そう言うと男Aに背を向け、僕の方へ歩いてくる。
「え、あ、うん?」
僕の脇を通り過ぎるキーラに、焦ってついてゆく。
去り際、ちらりと男Aの方を見たんだけど、キーラの威圧感に毒されたのか、へたりと座り込んだまま動かないようだった。
僕は視線をキーラへと戻し、一人先に歩いて行くその背中を追いかけた。