☆趣味小説(バテン)☆
□『一方通行な想い』
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つい先日、3年位付き合ってた彼女に「好きな人が出来たから別れてくれないか」と言ったら平手打ちを喰らった。
しかも往復だ。
「最低!私は結婚も考えてたのよ!」と泣きながら去ってゆく彼女の後ろ姿を見つめて、浅くため息を吐いた。
付き合ってたと言ってもこっちは軍人だ。そう毎日会える訳じゃない。
会えたとしても二週間に一回ほどだ。そもそもこっちから告白したのでなく。向こうからだ。
勿論遊びで付き合ってたんじゃないが、勝手に結婚も考えてたと言われても困る。
と、言うか、平手打ちがなかなかの威力だったな…。痛いぞ。
「将軍、」
「っ!な、なんです。」
「コレ、落としましたよ。」
自分の姿を見るなりビクリと身体を強ばらせたファドロに手を差し出す。
手には一通の手紙。
ご丁寧にハートのシールまで貼ってある。
「ラブレターですか?」
「………。」
「また先週と同じ様に帝国女性から?」
「………。」
こくん、と頷く。
「そう、ですか。」
「も、もういいでしょう!私はこれで失礼します!」
「あ、将軍。ラブレターは…」
「せっかく拾ってくださって申し訳ないですが要りません。」
瞳をスキードに向けて言い放つ。
「私には好きな人が居ますから!」
直ぐ様栗色の髪を翻して立ち去って行く。
追いかける事も出来たのだが、スキードは黙って手紙を真っ二つに裂いた。
紙を破く乾いた音が響いた。
(私には好きな人が居ますから!)
手紙は冷たい床に落ちる。
ファドロの後ろ姿を目で追う。
出来たのはそれだけだった。
一方通行な想い
(私の好きな貴方には好きな人が居ました。)
(私が欲しいのは貴方の身体じゃなくて心でした。)
(一生手に入らないからこそ、一生を掛けて手を伸ばしましょう。)
(例え貴方がその手を振り払おうとも。)
おわり。