☆趣味小説(バテン)☆
□『帝国悲喜謌』
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澄んで神々しい空に包まれ、帝国は天空に浮いていた。
見上げれば太陽に水晶球の表面を焼かれ、少しの違和感を残して瞬きする。
その焼かれて白い斑点になった向こう、緑色の色彩を主に彩られた服装の少年が歩いてくる。どうも一番見たい所は白く濁ったままで、じれったくてまた瞬きをした。
「あっ、」
大体治ったところでもう一度目を向ければ、其処に居たのはあの…
「スキード、頼みたい事があるんだが。」
(クソガキ…)
茶髪に黄色いメッシュを入れ、少しつり目の小生意気そうなガキ、もとい帝国軍士官…ファドロ。
若干21歳で士官になった明晰で、他の軍人には気に入られてなかったり疎まれてたりする童顔の男だ。もちろん、彼の信者も居るんだが。
その地位の為にあの物好きな厚化粧の皇帝とも寝たとか…あくまで噂だ。
しかも女性のアイドル的存在だから始末に終えないのだ。
(確かに顔はいいんだよな。)
とても整った顔。
だが、いいのは顔だけで…
「スキード、この軍隊なんだが…お前が指揮をしているんだよな。」
「はぁ…そうですが、なんですか。」
「不愉快だ。」
「…………あ゛?」
はぁ、とファドロは一つため息を吐いてそのボリュームのある茶髪を片手で解かす。
サラリサラリと流れる前髪の隙間から瞳孔をこちらに向けて言った。
(“不愉快”って…俺にしたらお前の方が千倍不愉快だっての!)
「は、はぁあ…、そ、そうですか…。」
「大体なんなんだ、私の事を変な視線で見てくる奴が多い。」
「はぁ…。」
(嫌われてるからだろ。)
冷めた目で視線を送ればファドロはきょとりと、つり目気味の目をぱちぱちした。
そんな表情からも童顔さが引き立てられる。
「なんだ、お前は違うんだな。」
「は?」
「私を………、いや、何でもない。」
「………?」
ふわふわと陽の雫が落ちては跳ねて輝く帝国兵の服装に付けた勲章。
また瞳の表面が焼けた様な気がして、スキードは手で目を擦る。次にファドロを見た時には、もう背を向けて歩き出した後ろ姿だった。
「っと、スキード。兵の方からちゃんと私の言った話伝えておけよ。」
「あ、はい…。」
うっとうしい様子で返事を返す。
ファドロは周りの兵達に道を譲らせていった。
(…で、なんの話だっけ?)
スキードは呆れた様に首をかしけて失笑を漏らした。