☆趣味小説(バテン)☆
□『今はない想いと優しさと花。』
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一人の少女が部屋の扉を開けて叫ぶ。
――お父様!お母様!
元から部屋にいた二人は愛しい我が子の声を聞いて振り返る。
少女は走って来たのだろう…息を荒くして手には一輪の花を持っていた。
父と呼ばれた人物が緑の髪を宙に輝かせて少女に歩み寄る。
「ミローディア?外のお花を勝手に摘んじゃダメだろ。お花さんだって生きてるんだよ。」
父は少女…ミローディアの頭を優しく触りながら言い聞かせる。
「あ…ごめんなさい…。」
少し気を落としながら謝るミローディアを見て母と呼ばれた人物が言った。
「もう、サギ。相変わらずね。ミローディアは子供なんだから…」
「でも…ミリィ。」
母…ミリィアルデにそう言われ、父…サギは口ごもる。サギの言っている事は正しいのだけれど、ミローディアには外の自然にたくさん触れて心豊かに育って欲しいとミリィは思うのだ。
「ねぇ、ミローディア。何処で摘んで来たの?そのお花…」
「家の外にたくさん咲いてたの。綺麗だったからお父様とお母様にも見せたくて…摘んじゃった…。」
ミローディアは向き直ると一輪の花を大切に持ちながら言う。