Long

□Think Me.
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1人で居ると、頭の中であのときの夜が蘇ってきた。

その度に壁にへばり付いて、膝を抱えて震えていた。

もう駄目かもしれない。
この調子だと、頭がおかしくなっちゃうかも。

そんなとき僕の隣に居たのは、一番好きな人じゃなくて他の人だった。

「……志村」
「ひじかたさん?」

こぼれ落ちた声は痛々しいぐらい、弱々しかった。

「どうした?」
「体が、あの事、覚えてて、気持ち悪い、です」
「……………」
「どうしたらいいんですか……」
「…寝てないのか?」
「寝たら、体が、おかしくなります」
「…一緒に寝るか?」
「……………」

自分からすがりついておきながら、土方さんの優しさは、優しすぎた。

これ以上、銀さんへの気持ちを裏切りたくない。
でも、

「一緒に寝て下さい」

僕の心は狂っていた。

土方さんは、客間の押し入れから布団を取り出して、僕の布団の隣にひいた。

「気持ち悪かったら、言えよ」
「はい…」

土方さんは優しく微笑んで、僕の頭を撫でてくれた。

土方さんが銀さんだったらっていう考えをしてしまう自分が、本当に最低だと思った。

土方さんが明かりを消して部屋が暗くなると、また体が震えた。

「志村」

土方さんの声が、僕を呼んだ。

「大丈夫だよ」

優しくまた、頭を撫でられた。

「土方さん」
「ん?」
「手、握ってていいですか?」
「…あぁ」

僕の手よりも一回りも二回りも大きな手が、僕の手を包んでくれた。



この手が、銀さんだったら………。
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