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□8月10日
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8月10日。

今日は歌舞伎町一大きな祭り、歌舞伎町祭りがある日でもあり、僕の大切な人の誕生日でもある。


8月10日


いつも僕と高杉くんは屋上でご飯を食べている。それは真夏の今も変わらずに。

「高杉くん、今日学校が終わったら一緒にお祭り行かない?」

今は夏休みだけど3年生、特にZ組のように成績の悪い生徒は夏休みも補習授業があるのだ。

「そういやぁ、今日が花火大会だったな」
「はい」
「ごめん、この前万斉達に誘われたんだよな」

箸でつかんでいた玉子焼きを落としそうになった。

「そう、ですか」
「お前も一緒に来るか?」
「いえ、いいです」

高杉くんが一回こっちを見て、また弁当を食べ始めた。


高杉くんは眼帯だとか目つきとか服装なんかで一部の生徒から怖がられていたり、嫌われたりしている。実際僕も最初は怖かった。
でもその反面、その外見だとか外見以上の優しさなんかで、高杉くんを慕っている人もたくさんいるのも確か。

だからそんな高杉くんと一緒にご飯を食べているのはすっごく不思議なことだったりするし、こんな僕が高杉くんと両想いなのは、本当に奇跡だと思う。

だけど僕らは自分達が両想いだと分かったところで、分かる前と変わったことは何もない。

いつも通り別々に学校に来て、授業を受けて、休み時間にちょっと話して、一緒にご飯を食べて、時間が合った日は一緒に帰る。

恋人だけど、友達みたいな関係。
別に嫌じゃないけど、ちょっと違うことができる日なら、違うことをしてみたいって思う。

でも、高杉くんは違うらしい。
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