小説

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(御味方敗北の危機。)



(明智弥平次秀満、味方敗兵を取りまとめておりまするが、武器を捨てての敗走に当座の用には役が立たず。)


(また原田備中討死、)


(細川兵部大輔、佐久間右衛門尉信盛、荒木村重他、寄り騎敗兵、木津川口付近に交代)




(日向守……)


(天王寺砦籠城にて敵の攻撃を今も受けております)


本願寺と織田との戦は劇的だった





報告を受けた信長は御座所から立ち上がる



「行くぞ」



周りの側近達は豆鉄砲をくらった表情である

「………?」


少なくとも剛勇果敢で兼ね備えてきた織田家筆頭の家臣柴田勝家に鋭敏さは必要ない


そんな反応に全く目もくれず信長は上段を下り、足早と家臣達の間を通り抜けた


小姓達は慌てて追いかける



「う、上様…!?」


(一体どこへ……!?)


家臣達には信長の目的を読み取ることは不可能であろう


しかし、そうでない者もいた


「これは一大事!出陣じゃ。急がねば!馬を出せ!!」

しきりに威張りだした小柄な男


名は羽柴筑前守秀吉



「なに!?なにを寝ぼけておるのだ猿!」


「それがしがこんな時に寝ぼけていると思われますか」

「寝ぼけておらぬじゃと!?」


勝家の口調は冷たい


「左様!上様は寝ぼけておりませぬ!」


「な、何を…!」


「まだわからぬですか…!?」


秀吉は苛立った


「〜〜!はっきりもの申せ!!」

勝家の顔は真っ赤だ


「上様は天王寺砦へ向かうのでござる!」

「なっ………天王寺だと…!?ま、まことか!?」


「そちは此処をしっかりと御守りなされ!!早く急がねば…!上様はまだいるか!?」


秀吉は家臣を引き連れて席を離れた


「上様ご自身からの出陣…」


勝家は違和感を感じる


(何故そこまで…)


(………………日向守か…)



「………そんなに惜しみて余りある相手なのか…………」


主のいなくなった広間は


煩くなった












── パンッ…─!!!



鞭を一打ち


信長は誰も呼ばず待たず疾駆した


電光石火のように二条の館から見えなくなっていく


何も具足をしておらず湯帷子のままである



急ぎ後から追ってくる者は役百騎程


信長を見離したら終わりだと誰もが思ったに違いない







──────








「進者往生極楽、 退者無間地獄」


腹の底から吐き出す念仏の声は天王寺砦を震えさせた



「光秀を殺せ!!光秀を殺せ!!」


大合唱である



どんなに殺しても地の底から這い出てくる門徒集の勢いは増すばかりだ


「撃てーっ!!撃てーっ!!」



光秀は砦の射撃口から応戦する

光秀は必死で兵に下知した


銃撃の乱射が飛び交う


門徒集は狂ったように死体を踏み出しては前へ前へと押し寄せてくる



「殿…!!危のうございます…!城中に……!」


「構わん!それよりも負傷者は…」


「増すばかりです!」


「城中へ非難させろ!」


「殿……!殿も中に…!」


「私は大丈夫だ!!」


── ドンッ…ドン…ッ!!!



さすがに雑加衆の洗練された射術は手ごわかった


光秀の横を球が掠め間一髪


光秀は体を崩した



「殿…!」


「………っ…!」


「怪我は…!?」


「大事ない!それより……!」


すぐに起き上がると光秀は家臣の銃へ手を伸ばした


「借りるぞ」


光秀は銃を構え反撃する


─── バン…ッ!


──── バン…ッ!!




隠れてる先程狙ってきた門徒を見事に射抜いた


その腕が光秀の鉄砲技術を後に語られるわけだか


鉄砲の弾は既に底をついてきてる


光秀も出来ることが限られてしまった






「弾はつきたか…」


「殿……このままでは…!」



「……………!!」



光秀は唇を噛み締める


「皆を中へ…!形成を立て直すしかない……!中へ入れ…っ!」



光秀は玉砕という覚悟を覚った











────…
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