ベーコン・レタス(B・L)

□花畑
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つい、目に留まった光景。
私はそれに見入ってしまう。

「どうした、鬼鮫。」

隣に居たイタチさんが問う。
ほら、あれですよ。と私が顎で示す。

「少しいいですか、イタチさん。」

私が花畑を見て言った。
イタチさんが、私に怪訝そうな視線を送ったのに、気づかないフリをする。

「・・・構わないが。」

イタチさんが似合わないと思っていることなど承知の上で、私は花畑に近づいた。
ナンセンスだ、という声が聞こえたような気がした。



「綺麗ですね・・・。心が洗われるようだ。」

色とりどりの花々。
その中に、私は立っている。

「ですよね。つい立ち寄ってしまいました。」

もう1人、誰かが来たようだったが、花から目をそらしはしなかった。

「私、仕事仲間に頼んでここに来たんですよ。」

イタチさんが見たら、何も言わずに3歩距離を置いただろう。
今の私は、自然と笑みが浮かんでいた。

「あ、僕もです!」

そこで、私は花から目を離し、話していた人を見る。
緑の服を着た少年。
そして、木の葉の額当てを身につけている。
まずい。
私は冷や汗をかいた。
木の葉との接触は控えるようにと、リーダーに言われたばかりだというのに。

「その服・・・まさか、暁の!」

相手も気がついたようだ。
ズザザッ、と音をたて、私と少年は距離を取る。
私は鮫肌を手に取り、少年は体術の構えをとった。
柔らかな風がふき、花々が揺れる。
甘い香が、鼻をくすぐった。

「止めましょう。折角の花が散ってしまう。」

口を開いたのは少年だった。
なんて命知らずな少年だろうか。

「・・・確かに、そうですね。」

私は同意を示した。
無駄な争いは避けたい。

「次会ったら、容赦しませんからね!」

木の葉の少年は、そう言って去っていった。



「用は済んだか。」

イタチさんが私に訊いた。

「やはり、木の葉は甘いですねぇ・・・。」
「何の話だ。」

しみじみと、少年のことを思い出す私に、イタチさんは冷たい目を向けた。


 

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