夢小説

□笑顔
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「ティエリアー!」

とたとた。
と効果音をつけて僕の後を追うのは、俺と同じガンダムマイスターのサユだ。
可愛らしい効果音がついているものの、俺からしたら不思議な奴だとしか思えない。
いつもいつも、俺の後を追い掛け回し、飽きもせず笑っているのだ。

「ティエー。」
「・・・・・・。」
「ねー、ティエってばー。」
「・・・・・・。」

返事をしないのは、いつも通り。
怒りも呆れもせず、俺は前だけを見ている。

「かまってよー。」
「・・・・・・。」

どてっ。
俺の前に回り込もうとしたサユは転んだ。
しかも、俺の目の前で。
邪魔だな、と思いながら構ってやることする。

「ティエー、痛いー。」

ぐりぐり。
俺は倒れたサユの頭を踏みにじる。
それでもサユは笑っている。
ティエリア、と俺の名前を呼んで。

「・・・刹那。帰ってたのか。」
「ああ、たった今。」

刹那は三秒ほどサユを見てから、俺へと視線を上げた。

「え、無視?」

サユが俺の足から少し逃れて言った。
しかし、俺はもう一度踏みなおす。

「怪我をしているようだが。」
「大丈夫だ。一応手当ては済ませている。」

刹那の腕には包帯が巻かれていた。
何故そんなところに、とも思ったが、口は挟まないことにした。

「刹那もティエも酷いよー。痛いし。」

サユが、うー、と唸った。
怒らずに、ただ笑って。
ここまでくると、ただ頭のおかしい奴に見える。

「じゃあな。」
「ああ。」

刹那を見送ってから、俺はサユから足を離し、放置したまま前へ進んだ。

「待ってよ、ティエー!」
「・・・・・・。」

とてとて。
サユはすぐに起き上がり、俺の後を追ってきた。
あの笑顔を絶やさずに。

「待ってってば、ティエリアー。」


彼女は、不思議だ。




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