☆
□白の剣と黒の魔術
2ページ/6ページ
下町の家の壁に寄りかかるように座り込んでいた少年。
まるで闇のような瞳と髪の持ち主は、行く宛てがないらしく、大人しくフレンが手を引くままについてきた。
それは人魔戦争から少し経ってからの話。
結界魔導器の外だと空が違って見える気がする。
まるで空気すら濁ったような息苦しさもあった。
「何なんだかなぁ」
牢を自主的に出てから、まさかこんな風になるとは思わなかった。
世間知らずのお姫様に加え、自称魔狩りの剣のエース、魔導器至上主義の子供、胡散臭いオッサンとクリティア族の女性。
いつの間にか旅を共にする者達が増えていった。
「……どうするつもりなのだ?」
「どうもこうもねえよ。しばらくは会い辛いだろうけどな」
ついてきたラピードの背中を撫で、ユーリは木の根元に座り込んで兄を見上げる。
デューク・バンタレイ。
10年前、人と始祖の隷長の戦いで人間側として戦ったが、帝国の裏切りで始祖の隷長側についた男。
そして、ユーリの実兄。
もちろん公にされる関係ではない。
しかしデュークは俗世を捨ててもユーリとは連絡を取り合っていたし、ユーリも兄を悪くは思っていない。
何も障害が無ければ仲睦まじく生活できていただろう。
.