□夢遊病者
2ページ/4ページ







ゾウ師はそのカルテをじっと見つめていた。

「そうか、やはり彼は……」

診察をしていた時に感じた違和感。

それが確信に変わった。


ゾウ師の首に冷たいものが添えられる。

はっとしてゾウ師は身を硬直させた。


かつて「砂漠の殺戮王」と呼ばれた。

今はその罪を償うために生きているが、鈍っているとはいえそう簡単に後ろを取られはしない。


しかし相手は気配もなくゾウ師の後ろを取った。

それだけで相手の実力が分かる。


かつての自分でも敵わない。


どちらにせよ、殺されても仕方のないことをしてきたのだ。

今更抵抗はしない。


「……私を殺すのですか」

「……どうやら、こういう脅しは通用しないみたいだね」

冷たいものが離れる。

ゾウ師は後ろを見上げた。



そこに立っていたのはキリエ・イルニス。

このカルテに書かれている人物だった。


だが回診で見たときとは違い、その眼光は鋭い。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ