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□夢遊病者
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ゾウ師はそのカルテをじっと見つめていた。
「そうか、やはり彼は……」
診察をしていた時に感じた違和感。
それが確信に変わった。
ゾウ師の首に冷たいものが添えられる。
はっとしてゾウ師は身を硬直させた。
かつて「砂漠の殺戮王」と呼ばれた。
今はその罪を償うために生きているが、鈍っているとはいえそう簡単に後ろを取られはしない。
しかし相手は気配もなくゾウ師の後ろを取った。
それだけで相手の実力が分かる。
かつての自分でも敵わない。
どちらにせよ、殺されても仕方のないことをしてきたのだ。
今更抵抗はしない。
「……私を殺すのですか」
「……どうやら、こういう脅しは通用しないみたいだね」
冷たいものが離れる。
ゾウ師は後ろを見上げた。
そこに立っていたのはキリエ・イルニス。
このカルテに書かれている人物だった。
だが回診で見たときとは違い、その眼光は鋭い。
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