海の包容

□審神者になった元勇者
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 彼がどうして日本に来たのか、そして審神者になったのか。リンク自身もよく分かっていない。

 リンクは元々、友人を探して世界各地を旅をしていたのだ。その途中不思議な空間に迷い込んでしまい、何故か本丸を持つことになった。

 その時連れていた馬を、リンクは大切に世話している。本来なら馬番となった刀剣に任せるべきなのだろうが、この馬だけは違った。何故なら主以外に体を触れることを極端に嫌がったからだ。

「主、主!」

本丸の奥から愛染国俊が駆けてきた。その手には一抱えもある荷物が。

「これ見つけたんだけど、主のだよな?」

それは、紛れもなく武具だった。

脇差くらいの長さは、子供が扱うには丁度良いくらいのだろう。

「主、これ使うのか?」

キラキラとした、好奇心に満ちた眼差し。愛染国俊が詰め寄って来た分リンクは仰け反る。

「……それは、使わないよ」

「え、どうしてだ?」

「それはね、御守りなんだ」

愛染国俊からその武器を受け取り、リンクは僅かに鞘から抜いた。


使っていないとはいえ、手入れは怠っていないのだろう。曇りひとつない刀身が光を弾く。


それは脇差ではなかった。刀とは違い、両刃の武器……剣だった。


「僕の故郷の宝剣で、暫くの間借りるつもりだったんだけど……」

「……主?」

「……今は皆がいるから、使わないさ」

そう言うリンクがどこか寂しげに見えたのは、愛染国俊の見間違いだろうか。

「主……もし俺に何か出来ることがあれば……」

「うん、ありがとう。何かあったら相談するよ」

 微笑み、剣を仕舞いに戻るリンクを愛染国俊は見送るしかなかった。
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