空に消える夢

□白銀の賢者
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「セネル、お前一ヶ月どこに行ってたんだ?」

ウェルテスでウィルに呼び止められ、セネルは立ち止まった。

「ヴァーツラフの残党がいないか見回ってた」

艦橋での戦いの後、灯台の街ウェルテスにセネルの姿はなかった。

情報屋であるジェイに聞けば分かったのかもしれないが、ジェイもあちこちに奔走しててなかなか捕まらなかった。

「お前に渡す物がある」

ウィルに渡されたものを反射的に受け取り、それを見る。

「これは……」

「聖ガドリア王国からの勲章だ」

少しの間それを見つめ、セネルは持ち前の爪術の力でその勲章を握り潰した。

「セ、セネル!?」

さすがのウィルもこれには慌てる。

セネルはさらにそれを地面に叩きつけ、踏みつける。

「俺はこんな物のために戦ったんじゃない。危うくステラとシャーリィは死にかけたんだぞ!」


もしあの時滄我砲が撃たれていたら。

セネルが砲撃を阻止できなかったら。


あれほどまでに衰弱していたステラは命を落としていただろう。


「……セネル、あれ以来シャーリィ達とは会ったことがあるのか?」

「いや」

ステラもシャーリィも、水の民の里に行ってしまいセネルはあれ以来会っていなかった。

「丁度良い」

ウィルの眼鏡が光った。





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