空に消える夢
□呪い
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「くそっ……」
腹立たしい。
どうしようもない無力感。
そして罪悪感。
以前なら悩む必要がなかった。
ただスールズでのんびりと暮らし、ポプラおばさんのピーチパイを食べる。
クレアがいておじさんにおばさん、村の人がいる。
それだけで幸せだった。
なのにどうして。
せめて何も知らず、ただの青年として過ごしていたら少しは違ったのかもしれない。
だがヴェイグは知っていた。
聖獣のことも、彼らがいる場所のことも。
それに月のフォルスやゲオルギアスが何を封じているのかも。
一般常識よりも先に一般には出回らない、聖獣でも知らないようなことを親に教え込まれた。
その結果がこれ。
幼い頃からしつこく躾けられ、もはや脅迫になるのではないかという戒律。
頭の奥底にこびりついている声。
どんなに逃れようと、忘れようとしても消えてくれない。
それは掟。
遥か昔、カレギアがカレギアとなった時から存在した一族の戒め。
それが鎖となって体を拘束している。
最早呪いと言っても差し障りはない。
「俺は、どうすればいい……?」
戒めと、感情。
感情がなければここまで苦しむ必要はなかったのに。
戒めがなければ感情のまま動き、クレアを今すぐにでも助けに行くのに。
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