空に消える夢

□フェスメン・システム
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『………聞……我が…………答……』


誰だ…?


『急げ……………が、来……』


聞こえない。
何て言ってるんだ?


『思い………おま…………去を…』


教えてくれ!








「……ちゃん!お兄ちゃん!」

聞き覚えのある声にセネルは目を覚ました。
目の前にシャーリィがいる。

「……あと三時間……」

そして目を閉じる。

「……お兄ちゃん、いい加減起きて。ウィルさんが呼んでるよ」
「パス」
「パスなし」
「ZZZ……」

再び眠り始めたセネルに、シャーリィは溜め息をついた。

「起きないなら……ハティの料理無理矢理食べさせるよ」

すぐさまがばりとセネルは起き上がった。
さすがに睡眠のためにハリエットの料理を食べる気は無かった。

「分かった、行くよシャーリィ」

仕方なくベッドから起き上がる。

「お兄ちゃん、嫌な夢でも見た?」

ふと心配そうな顔でシャーリィがセネルを見た。

「……どうしてだ?」

努めて平静を装う。

動揺を悟られないように。

「うなされてたもん」
「……そうか。でも、大丈夫だ」
「そう?」

それでもまだ心配そうなシャーリィ。

(そう、大丈夫だ…)

湧き上がる不安を押し殺す。





シャーリィと共にウィルの家へやって来た。

「遅かったな、セネル」

ウィルの家にはすでにクロエ、ノーマ、モーゼス、ジェイもいた。

「ようやっと来たか。セの字」
「ウィル、何の用だ?」

笑っているモーゼスは流し、セネルはウィルを見た。

「セネル、お前、昨日噴水広場で騒ぎを起こしかけただろう」
「……ああ」

きっと昨日の演説の男とのことだろう。
あまり思い出したくないが。

「それについて、マウリッツさんが呼んでいます」
「どうしてマウリッツさんが知っているんだ?」

どうして昨日の騒ぎを知っているのかが気になった。

「私が言ったの。そうしたらマウリッツさん、暗い顔をして私達を連れてきてって……」

また陸の民と水の民の間で諍いが起きる可能性があるのだ。マウリッツも放っておけなかったのだろう。

「そういう事だ。行こう、クーリッジ」
「……ああ」





『奴らは人ではない』

『思い切り殺せ』

『どうした?』

『お前に拒否権はない』

『虫を殺すのに心は痛まんだろう?なのになぜ奴らを殺せないのだ?』






昔、軍で言い聞かされた言葉が蘇る。

どれもこれもセネルには馴染まず、そのお陰でメルネスを探すという任務に就けたのだが。





「……なあ」

セネルは俯いた。

頭痛がする。

「水の民を……まだ怖いと思うか?」

以前、静の滄我からこの星の歴史を知らされたとき、誰もが水の民が怖いと認めた。
そして昨日、あんな事件があった。

だからこそセネルは聞いた。

「………」

シャーリィは黙って成り行きを見守る。

「う〜ん、前はね……」
「今は、同じ世界に住む者として、仲良くしなくてはならない」
「シャーリィは私達の仲間だしな」
「皆さん……」

誰も否定しなかったことに、セネルはあえて突っ込まなかった。

「……ところで」

改まるウィル。

「朝ご飯はまだだろう?ハリエットの料理があるのだが……」
「いらん!」

ただちに叫んだノーマだった。





(もし皆が水の民と敵対するようになったら……)


そんな事は無いと信じている。
だが陸の民全てがそうではない。



もし、また水の民と戦うことになってしまったら……。


セネルは拳を握り締めた。

しばらく頭痛はなくなりそうにない。




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