空に消える夢
□居心地の良い場所
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銀色の髪。
記憶の中にあるおぼろげな親は、微笑んで頭を撫でてくれた。
でもセネルにとってこの銀の髪は忌むべきものだった。
水の民の血を引きながら、セネルは陸の民の血も受け継いでいるのだから。
水の民の隠れ里の中でも、最も外れにある家。
マウリッツ村長の温情によって暮らすことを許されているのはまだ年端もいかない少年だった。
僅かばかりの畑を耕し、時折村に近寄ってくる魔物を狩って生活していく日々。
それでもこの村に住まわせてくれるだけでありがたかった。
「お兄ちゃん!」
誰も近寄らないはずの家に喜んでやって来るのはとある姉妹だけだった。
「メルネス様……またいらしたのですか?」
困ったようにセネルは年下の妹分を見下ろす。
「あら、私もいるのよ?」
「ステラも……メルネス様をお連れしないでください」
「フフ。それは無理ね。それより……敬語。ほら、シャーリィが膨れてるわよ」
セネルが改めてシャーリィを見ると、確かにシャーリィは頬を膨らませていた。
「……あなたは4000年ぶりのメルネス様なのですから、敬意を表すのは当然です。いずれは水の民を率いるお方なのですよ」
「……嫌」
「メルネス様……」
「ほら、こうなったシャーリィの機嫌直すのは大変よ」
ステラは助けるどころか笑って放置。
セネルは溜め息をついた。
「……シャーリィ」
「なぁに、お兄ちゃん!」
とたんにシャーリィは表情を綻ばせた。
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