空に消える夢

□フェスメン・システム
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まるで夢のような光景。

いつもは綺麗な村が、赤く染まっていた。


その中心にいるのは、1人の少年。


同族の血に染まった服。



その村で生き残っているのは少年のみだった。



少年は侵略者達を睨みつけた。

「ヘルウレスめが……!」

少年を庇い、倒れていった同族のため、少年は生き残らねばならなかった。

だがそれも叶いそうにない。

最後の抵抗とばかりにテルクェスを生み出す。

少年はその輝きが自慢だった。

その光に、侵略者達がかすかに怯む。

「うわああああ!」

せめて一点突破できれば、まだ生き残れるかもしれない。

儚い望みを抱き、少年は侵略者達に突進していった。



それが、その村が全滅した瞬間だった。








シュヴァルツの事件から1年。
と言っても生活はほとんど変わっていない。
ウィルは保安官(本人は博物学者と言い張っている)としてウェルテスの人の相談役となっている。
クロエは病院の1室を借り、エルザに慕われている。
ノーマは1度実家に帰り、ちゃんと学校を卒業して今はまたとレジャーハンターとしてウェルテス戻ってきた。
モーゼス達山賊はまだウェルテスの広場に居座っている。
ジェイは情報屋を続けているが、以前のように「不可視の」とは呼ばれなくなった。
シャーリィは水の民と陸の民の融和のために奔走している。
そしてセネルはというと、マリントルーパーなのだが保安官の仕事もしていた。




セネルはウェルテスの噴水広場にやって来た。
遊説をしている人がいると小耳に挟んだからだ。
普段はそういった類のものに興味を持たないセネルだったが、今回のはそうもいかなかった。

「諸君らは覚えておろう!あの怒りを!苦しみを!」

訴えているのはいかにも聖職者然とした服装の男。その周りには少なからぬ人垣が。

「奴らはいずれまた牙を剥く!その前にたおさねばならん!種としても我々人類の方が上だ!我らの力を思い知らせてやろう!

煌髪人を根絶やしにしろ!」

「いい加減にしろ!」

そこまで聞いて、セネルは叫んだ。

「水の民だとか、陸の民だとか関係ないだろ!」
「お前はなぜ煌髪人の味方をする?あいつらは人ではないだろ!」
「そんなことはない!みんな普通の人だ!」

確かにルーツは違う。
だが、今は同じ世界に住んでいる。

不意に頭痛がした。


『奴らは人ではない!』

『化け物!』

『殺せ!』

『コロセ』

『コロセ!』


「黙…れ…」

セネルは呻いた。

「どうして…あいつらと……同じことを……」

自分が何を口走っているか分からない。

「知っているだろう!?奴らの髪の色を!目の色を!何より、水の中で呼吸が出来るではないか!それでも人だと!?」

「確かに……」
「おかしいよな……」

周囲の人々がひそひそと話す。

「お前らまで……」

頭をおさえ、セネルは男を睨む。
こんな考えが、そしてそれに同意する人がいるのが悲しかった。

「どうしてだ……どうして分かんないんだ……」


その時、どこからか音楽が流れてきた。


「この音楽は……」

しまったと思うが、遅い。

「ヨウヨウそこ行くあんちゃん、街の掟をしってるかい?」

フェロボンことフェロモンボンバーズのエドが噴水のオブジェの上に立っていた。

「フェロボンだろ……」
「だから略すな!」

音楽が止まった。
エドがセネルの隣に着地する。

「と、言うわけだ。ケンカは困るぜ?」
「繋がってないだろ…」

セネルの突っ込みはスルー。

「……っち」

男は舌打ちをして、去っていった。


(あいつ……)

気が抜けたのか、どっと疲れを感じた。

同時に予感もする。


また、戦いが起こる、と。

いつの間にか頭痛は治まっていた。





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