西山中学陸上部 第一部

□READY,GO!
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瞳たちは中学二年生になった。
クラス替えで2年B組にクラスが変わり、鈴木・佐々田・世良・あたしと四人が同じクラスに揃った。
四人が同じクラスになったのは二年ぶりだ。
永野はもちろん、別のクラスになった。
このクラスは元・西町小出身者が多く、中でも瞳たちがいた旧・六年四組の出身者が大半を占める。
過ごしやすいクラスになりそうだ、と思った。
姉の水樹が卒業して、千寿西高校へ入学が決まり、入れ替わりで妹の和紗が入学してきた。
藤谷家は三姉妹中二人が入学で、にわかにあわただしくなった。





昨年の夏前に剣道部を辞めたので、自動的に帰宅部になってしまった。
西山中学では全員部活に入ることを義務づけられている。
あまり長く帰宅部をしているわけにはいかないなぁ、と瞳は考えていた。
新学年になったことだし、一年生に混じって部活動見学をしようと体育館へ向かって歩いていたところ、後ろから呼び止められる。
呼び止められたというよりは、叫びに振り向いたと言ったほうが正しいかもしれない。
「そこの三つ編みの人!」
あたりを見回してみたが、瞳以外の生徒はいなかった。
みんな下校してるか、部活してるんだろうから当然か。
振り返った先には、一人の男子が立っている。
ネクタイが瞳のリボンと同じ青色、ということは同学年か。
「もしかして、部活見学に行くんですか?」
「そうですけど」
「よかったら、これどうぞ」
彼はそう言って、手にしているチラシをくれた。
B5版のわら半紙には、お世辞でも綺麗とは言えない字で『陸上部』と大書きされている。
西山中学に陸上部はなかったはずだ。
瞳の足の速さは、西町小学校旧六年四組全員のお墨付きだ。
もし、あったら入学直後に入部していただろう。



「あのぅ……」
「何でしょう?」
「陸上部って、今までありましたか?」
すごく失礼な質問だと思う。
けれど、彼はそんなことは気にしていないらしい。
「いいえ」
「じゃ、入部できないじゃないですか」
「今年からできるんです」
そうか。
道理で知らないはずだよ。
「あぁ、よかった。2年生の人で。声かけるまで『3年生だったらどうしよう』と思ってたんですよ」
へ? どういうこと?
瞳の頭の中は軽く混乱した。
「何で『3年生だったらどうしよう』なんですか?」
「3年生は転部禁止なんですよ。だから、期待させちゃったら申し訳ないな、と」
ということは、先輩がいないってこと……。
「それ本当ですか? 3年生が入れないって……」
「本当ですよ。もしよろしければ、お友達も誘ってください。 入部届は裏にあります」
裏?
よく見ると、さっきのわら半紙はホッチキスで止められている。
めくると、部活動入部届がくっついていた。
「三日後のクラブの時間に初顔合わせやりますから、それまでに考えてみてください」
そう言って、彼は去っていった。




彼が去るのを見届けて、あたしは部活を見学せずに教室に戻ることにした。
2年B組のドアを開け、まっすぐ自分の席に着く。
急いでカバンの中から筆箱をあさる。
ペンを出すことすらもどかしい。
入部届をチラシから剥ぎ取って、自分の名前の下に大きく部活名を書き入れる。
書き終えると、職員室へ向かう。


顧問の先生の顔がわからないや。
職員室に行ってから尋ねればいいか。
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