第一部インターバル

□その姿は光
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 あたしの名前は河内世良。
中平市立西町小学校四年一組、出席番号は女子の十番。
誕生日がまだ来ないから、九歳。
一人っ子。
それまであたしはきょうだいが欲しいとか思っていなかった。
両親が二人揃って、あたしに教えてくれるまでは。


 小学四年生になってすぐの、ある日。
ソファーに座っていたお父さんが、あたしを呼ぶ。
「世良、ちょっとこっちに来なさい」
夕飯を取っていた時から両親が難しい顔をしていたので、何か怒られるのかな、と思った。
体育の後の算数の時間に豪快に居眠りしちゃったこととか。
そのせいで二日ほど放課後居残りさせられたこととか。
給食のプリンを男子を交えた争奪戦の上に奪い取ったとか。
理科のテストがあんまりよくない点数だったこととか、いろいろ。


お風呂のしたくを終えたお母さんがやってきて、お父さんの隣に座る。
両親は子どものあたしから見ても、かなり仲がいいというかラブラブだ。
二人は互いの顔を見合わせてから、お母さんがあたしに言う。
「うちに赤ちゃんが来ます」
びっくりした。
もう、それしかわからなかった。
「……マジで?」
つい、覚えたての言葉が出てくる。
それくらいびっくり。
「本当です」
「何でわかるの?」
「お医者さんに診てもらいました」
「いつぐらいに来るの?」
「世良の十歳の誕生日が来て、秋が過ぎて、冬になるころに来ます」
あたしの誕生日は八月だ。
「ほんとにほんと?」
「「うん」」
二人で頷いてる。
嬉しいことなんだ。
二人が嬉しいことは、あたしも嬉しい。

           
 そういえば、生まれた時からまるまる知ってる家族ができるんだ。
いとこはみんな年上だし、同い年のいとこは数ヶ月しか違わないからほとんど記憶がない。
なんか、楽しみかも。


 だんだんとお母さんのお腹が大きくなってきた。
本当にこの中にいるんだなぁ。
お父さんと一緒にお腹に向かって話しかけてみたりもする。
お母さんは仕事をやめて家にいるようになった。
時々病院に行って、赤ちゃんの様子をお医者さんに診てもらう。
病院では生まれる前なのに男か女か、とかも判っちゃうらしい。
なので、両親にお願いした。
「もし男か女か判っても、ぜっったいに言わないでね!!」
妹か弟かは、生まれてからの楽しみにするんだから。
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