Boy

□慣れ
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「おいおい、そりゃあ、ねぇーって。」

玄関から外に出てみれば、酷い有様だった。
車からは火が出てるし、庭師が綺麗に手入れした草木は既になかった。
すれ違う部下たちは、ストレッチャーで運ぶ人、運ばれる人達で、既に助からない部下もいるだろう。

山本は、ため息を吐き状況を確認した。

耳に付けていた無線機からは、状況等が流れてくる。

犯人は、10人。
元、仲間だった部下だった。
結局はスパイだった。
それがバレて、戦っているという。


状況を理解したところで、周りの部下に指示を与えようと一歩踏み出した。

ぽつ。

山本の額に何か冷たい物が当たった。

上を見上げる。

上にはどんよりと暗い灰色をした空。
先程屋敷の窓から見た空よりも更に暗くなっている。

「雨だ。」

そう呟いて、刀を鞘から抜く。

部下達に指示を出して下がらせた。


山本は、構えながらも犯人達の前に立って説得をしようと前に立ちはだかった。

結局、山本の説得にも応じず、無理矢理ボスの前に連れていく事が決定された。

ごめんな。


と心の中で心にもない言葉を唱えた。
毎回、毎回何故か唱える言葉。
最初こそ心から思っていたのに、今は微塵にも思っていない。
いちいち思っていたら疲れるからだ。


「…時雨蒼燕流…」


日本刀を自分の前に構えた。
目を閉じ、意識を集中させる。














敵の悲鳴で、片付いた。

気絶させる程度で、死にいたるケガではない。

刀を軽く振り、水気を落として拭うように刀をしまった。


刀を締まった後に、後ろから物音がして、振り向けば気絶したと思った敵がナイフを持って向かってきた。
部下が気付き向かってきても間に合わなくて、刀を再び抜く時間さえもない距離で、

あぁ、俺刺されるんだ。

と、諦めて目を閉じた。












雨は、いっそう増して刺される音よりも水の音の方が大きかった。

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