はなちゃん

□儀式
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「はなちゃん、遅いよー」

エイムはそんなことを言ったが、
はなちゃんは気にも留めなかった。

むしろ気にも留めていられなかった。

エイムが袴を履いていた。
よく見たら隣でエビを食べているジョンファンもだった。

エイムは赤い袴、
そして頭にはなぜか枝がくくりつけられている。

ジョンファンはと言うと、
青い袴に、火を灯したろうそくを頭にくくりつけていた。

しばらく無言で見ていると、
ジョンファンが言った。

「そんな顔して欲しくないマス!大丈夫マス!はなちゃんの分もあるマスよ」

さらに嫌な顔をした気がしたが、
ジョンファンには「笑顔」ととられたらしい。

満面の笑みではなちゃんに赤い袴を渡したジョンファン。

エイムを見ると、
なかなか暑苦しいらしく、
苦しそうな顔をしていた。



「この…頭のやつは何?」

はなちゃんは自分の頭に巻いている赤い紐についた
大きめの輪っかをしめした。

素朴な疑問のはずだったが、
ジョンファンにはかなり驚かれたので
はなちゃんは少し苛ッと来た。

「これは魔除けのつもりマスよ!」

結局つもりかよ!と思ったのは
はなちゃんだけのようだ。

「じゃあ、ジョンファンとエイムのは?」

「エイムの枝は『マタタビ』という猫が大好きな?植物マス!僕のは明日という名の道を照らす灯りマスね」

はなちゃんは風が冷たいな、と思っていた。

「そう言えば、何のおまじないをするの?」

エイムは眠気のために話さえ聞いていなかった。

「…僕たちの将来…」

一気に目が覚めたエイムと
一気に興味の色を出したはなちゃんは
大人しくジョンファンに従い始めた。



「本当にこれで出来るの?」

疑いの色しか見えないエイムとはなちゃんは
ジョンファンの後ろ姿に言った。

ジョンファンが用意した物と言えば
「にんじん」「ジャガイモ」「挽肉」「ご飯」「カレー粉」「水」

「お前何を作る気だよ!!!」

「え?作らないマスよ?」

「ウソつけ!これ、カレーの材料じゃないか!!…なんか足りない気もするけど…」

「いや、だって、僕カレー好きマスもん…」

興味ねぇよ…と、エイムは呟いたが、
ジョンファンはそれどころではない。

準備はいいマスか?

ジョンファンの落ち着いた、
それでいて緊張感のある声が聞こえ、
少し笑えた。

二人が頷いたのを確認すると、
ジョンファンは面白すぎるほど真面目な顔で
「あいうえご!!!」
と叫んだ。

すると、あたりに白い煙のような物が現れ、
三人を取り巻いた。
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