はなちゃん

□風邪
2ページ/3ページ

その日の朝、
はなちゃん(あだ名)は
目が死んでいた。

つり目が死んでいた。
どんな様子だろう。

「おか…さん、ごふぉっ、頭いたぁい…」

だるそうな様子で母親に訴えかけた。

はなちゃんのマミーは
「んー?」
と言いながら近寄ってきた。

「んー…。特にコブは出来てないわねぇ…。何かしら?」

正気かこいつ、
と言う目をしたのは
近くを通りかかった使用人だった。

使用人はため息を隠しながらやってきた。

「奥様、彩様は風邪だと思われます。病院に行った方がよろしいかと」

笑いを含んだ声だったが
マミー様は気にもとめなかった。

「そうなの…じゃあ彩。今日は学校お休みね」

頭をなでてもらって、少し嬉しかった反面、
こんな阿呆な母親の子供でいいのか
しみじみ考えるはなちゃんがいた。




「え?はなちゃん、学校休みでマスか?」

ジョンファン(あだ名)は
驚いた声を上げたが、
実のところどうでもよく、
昨日発売された雑誌を読んでいた。

「そうなのよ…。はなちゃんがいないと私、おちょくる相手がいないから暇で暇で…」

エイム(あだ名)が
さりげなく言った本音は
風邪に流され、
はなちゃんのくしゃみの素となった。




「っぷしょうぃ!!」

何度も言うかも知れないが、
彼女はまだ小学一年生である。

アルツハイマーなところも
このくしゃみの仕方も
どことなくオヤジくさい。

「あら、彩はお父様に似ないのね。どっちかっていうとお爺様かしら」

さりげなく残酷な一言。

「河合彩様ー」

待合室中に高めの声が響いた。
順番が来たようだ。

はなちゃんたちは手を繋ぎながら歩いていった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ