はなちゃん

□「はなちゃん」
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最初は何かの間違いだと思った。でも,夢ではない。

証拠に朝の通勤ラッシュで息を切らしたおじさんが,激しくぶつかって,痛い。

間の抜けたようなアナウンスと共に,電車が小さく減速し始めた。

『………』

はなちゃん(あだ名)は何も言わず,ただ普通の小学生を装っていた。

でも,顔をのぞき込まれたら

「トイレ行きたいんでしょ?我慢しちゃ駄目だよ。ほら,こっちこっち」

と言われそうなほど真っ青になっていた。

もちろん,トイレを我慢しているわけではない。

周りからは分からない強烈な表情は,
体操着入れを持つ右手と,お弁当入れを持つ左手を交互ににらみつけていた。

『やっべ…』

はなちゃん。
六歳にして最凶のピンチ。

『通学カバン忘れた…』

はなちゃん。
六歳にして,最強のアルツハイマー小学生。





アルツハイマーはなちゃんの学校は,
乗用車で来れば何の問題もなく10分程度で来られるのだが,
それは不可能だった。

はなちゃんの家族は,誰一人免許を持っていない。

何故か?自分で運転することがないからである。

一般的に分かりやすく言うと,まぁ,あれだ。大金持ちなんですよ。

と言うわけで,シャイなセレブの子,はなちゃんは,
黒塗りの大きな車に乗るのが恥ずかしいと言う理由で電車通学してるのでした。

時は今に移り,
はなちゃんは,流石に観念したのか,
黒塗りの体長の長い車に乗った使用人からカバンを受け取った。

「はーなーちゃん!」

車が去った後,後ろから体当たりされ,
はなちゃんは前のめりになってこけた。

同じクラスのエイム(あだ名)だった。

「ぐふッ!」
「あ,すんません。そんなことよりさぁ!今のってはなちゃんちの使用人さん?」

そんなこと…?人のことぶっ倒しといて「そんなこと」?随分とまぁ…

取り敢えず,はなちゃんが頷くと,エイムは言った。

「ふぅーん…」

興味ないなら聞くなよ!!
…と,シャイなはなちゃんが言えるようになる日はまだ来ないだろう。

「じゃ,ほら,早く行かないと遅刻にされちゃうよ!」

エイムは走っていったが,はなちゃんはどうでも良くなっていた。





このお話は,
本名『河合彩』通称『はなちゃん』(エイム命名)が繰り広げるおかしな日々の話です。









±後書き±
さて,読む人いるのかどうかは知りませんが,一話です。短いです。
大体こんな感じで行きたいと思います。
2008/2/15
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