君に捧げるレクイエム
□【第二夜・朋友 前編】
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そこは密度の高い森だった
高い背丈の木々が不規則に集い、頭上を見上げても隙間がなく空が見えない
故に
光はほとんど入ってこない
足元の地面は湿り気を帯びて苔や羊歯(しだ)植物が緑の絨毯と化している
あと数刻で夜が明けるといえど
まだ夜中
その森の中を歩いている旅人が居た
自分の体さえ見えるか怪しい暗闇の中
慣れた様子で
障害物となっている低い茂みや木の根、落とし穴のようなウサギの巣穴を器用に避けて
ひたすら西へと向かっている
右も左も同じように見える森の中、間違えることなく西へ