連なる世界

□貴方の声が聞きたくて
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「町はいつもこんな感じ?」
「いえ。冬の、この時期だけです」

 少しずつ増える会話に、解けていく心。
 そんな中、貴方は突然別れを告げた。

「明日の明け頃、町を出るよ」
「え……」
「ここには少し長く居すぎたからね」

 会ったときと変わらない笑顔で貴方は言った。

「最後に一つだけ、願いを叶えてあげる」
「……」

 「行かないで。ずっと傍にいて」なんて、恥ずかしい台詞が言葉に出来る訳もなく、私にあなたを止める権利もない事を理解してるから――。
 首を傾げるあなたを睨みながら、願いを絞った。

「……歌」
「うん?」
「歌、上手いって、自分で言ってたじゃないですか」
「うん」

 謙遜も誇示もせず、素直に頷くあなたに、私は願いを伝えた。

「聞かせて」

 すると、あなたは何故か頬を赤らめて笑った。「いいよ」と。

 目を閉じ、深呼吸。
 目を開き、空を仰ぐ。
 私を見て、微笑んだ。
 あなたが紡ぐ歌が響く。


 ああ、なんて綺麗な声。思わず目を閉じて聴き入ってしまうほど。


 静かに歌が閉じられる。聖夜の町に響いた優しい歌物語。
 頬に冷たさを感じて目を開けた。
 雪の歌の終わりと同時に雪が降るなんて、あなたは魔法使いみたいね。もしかしたら天使だったのかも。



 貴方の声が聞きたくて、私は今日も広場に向かう。



 今度は私も連れてって――なんてね。








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