連なる世界
□貴方の声が聞きたくて
2ページ/2ページ
「町はいつもこんな感じ?」
「いえ。冬の、この時期だけです」
少しずつ増える会話に、解けていく心。
そんな中、貴方は突然別れを告げた。
「明日の明け頃、町を出るよ」
「え……」
「ここには少し長く居すぎたからね」
会ったときと変わらない笑顔で貴方は言った。
「最後に一つだけ、願いを叶えてあげる」
「……」
「行かないで。ずっと傍にいて」なんて、恥ずかしい台詞が言葉に出来る訳もなく、私にあなたを止める権利もない事を理解してるから――。
首を傾げるあなたを睨みながら、願いを絞った。
「……歌」
「うん?」
「歌、上手いって、自分で言ってたじゃないですか」
「うん」
謙遜も誇示もせず、素直に頷くあなたに、私は願いを伝えた。
「聞かせて」
すると、あなたは何故か頬を赤らめて笑った。「いいよ」と。
目を閉じ、深呼吸。
目を開き、空を仰ぐ。
私を見て、微笑んだ。
あなたが紡ぐ歌が響く。
ああ、なんて綺麗な声。思わず目を閉じて聴き入ってしまうほど。
静かに歌が閉じられる。聖夜の町に響いた優しい歌物語。
頬に冷たさを感じて目を開けた。
雪の歌の終わりと同時に雪が降るなんて、あなたは魔法使いみたいね。もしかしたら天使だったのかも。
貴方の声が聞きたくて、私は今日も広場に向かう。
今度は私も連れてって――なんてね。
終