Heath
□夏の名残と文化祭
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1*壊された街(イザラ)
荒れた土地……そこは元々街だった。所々に見える朽ち木が目立つ。
おれはそれらを見て回っていた。
もう百年程も昔になるが、あの時の記憶は色褪せていない。
「……なぁ、ヒース」
誰でもない、自分の内へ問いかける。
「やっぱり、この街は死んだことになるのか? おれのせいで……」
『君のせいじゃないよ。実際、街を破壊したのはぼくの力だし』
気休めにもならない。
彼(?)の封印を解いてしまったのは自分だ。封印を解かなければ街が壊れることも、仲間を失うこともなかったのに……。
まぁ、本当の仲間がいたのかと聞かれると難しいところもあるが。
空を見上げてみる。
どんよりとした鈍色の雲が立ち込めているだけのつまらない空。
ここは人間界のように色んな表情を見せることはない。鳥が楽しそうに飛び回ることも無い……。
『鈴の所に戻らないの?』
「……もう少し、してからな」
『そんな事言ってると、あっちに戻った時にはもう鈴、おばあさんになってるかもよ?』
ヒースが冗談めかしていった。
おれは「まさか」と笑って見せたが、少なからず不安もあった。
人間の一生というものはとても短いもの。気が付けば対象者はもう居なくて……何て事はよくある話だ。
『なになに? 不安になって来た?』
「……」
あえて答えず、街の中心に向かった。