短編・詩

□木の葉が舞う
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 十一月中旬。頭上にあるのは昼なのに暗い空と葉の少なくなった桜の木。
 寒々しい景色を見上げる私の周りには、乾いた音を立てて動くものがある。落ち葉だ。
 夏とは装いを変え、赤、黄色、橙に茶色。まだ緑色の残っているものもあるし、虫喰い穴の空き方もどれひとつとして同じものはない。
 運びかけの荷物を地面に置いて、ぼんやりと空を見てみた。
 大きな黒い影が羽音と共に枝へ止まった。枝は重さで揺れ、数枚の木の葉が落ちて来た。不規則なリズムで宙を舞って、私のすぐ傍に着地した。
 やあ、これで君も《落ち葉》の仲間入りだね。
 風に揺れる枝がまるで手を振っているようで、枝から離れて回りながら散っていく葉を送り出しているように見えた。
 風がおさまった頃には枝に止まっていた黒い鳥もいなくなっていて、落ち葉がわずかに乾いた音を立てるだけだった。
 さて、帰ろうか。
 地面に置いていた荷物を担ぎ直し、落ち葉で埋まるアスファルトの道をあるいていく。








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:音楽の課題をしているときに出来た話。《私》は《アリ=アントン》。名前から分かるように《蟻》です。

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