短編・詩

□時計の気持ち
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 平日の朝が私の仕事の時間。

『ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ……』

 前日の夜に目覚ましをセットして「明日もよろしくね」なんて言っていたのに、私の声は聞こえていないようだ。

『ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ……』

 早くしないと遅刻するぞー。――そんな感じで5分程叫び続けると、のっそりと持ち上げられた手が机の上を這い、私を探す。
 やがて私に手がかかり……。

 …ばちんっ。

 私を黙らせてするすると戻ってしまった。
 毎朝のことながら、時間通りに起こそうとしたヒトに一撃くれて二度寝とは失礼過ぎやしないだろうか。
 同じようにアラームをセットされている蒼(携帯)さんはもう少し優しい扱いなのに……。でも私より叫ばなきゃいけない時間多いらしいし。たまに開かれたまま腕の下敷きにされたりするらしいし。
 ……どちらの方が良いのだろう?


 蒼さんが三度目になる歌を歌い出す。
 本格的に遅刻の時間が迫って来ている。
 蒼さんは数分おきに同じ歌を繰り返す。スヌーズ機能というらしい。
 やがてまた腕が伸びてきた。手探りで音の発生源を探す。
 蒼さんが手に掴まれて静かになった。

 静かだ。

 蒼さんの歌を止めてから音沙汰のなかった主が跳ね起きた。
 壁に掛かっている壁時計を見て何やら叫んでいる。
 今まで起きなかった主が悪い。私達がどれだけ叫んでいたかも知らないで。
 蒼さんを鞄に放り込んで部屋を飛び出し階段を駆け降りていく主。
 間に合ったかどうかは帰って来てから蒼さんにでも聞こう。



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:目覚まし時計には「学習能力のない奴」とか思われていそうだ……。
 090913.

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