短編・詩
□天使の歌
1ページ/3ページ
『天使の歌』
明るい日の差す鳥籠の中。
ひとつの音に反応して歌う鳥。
その中に一人、翼も無く、歌いもしない鳥がいた。
彼女の名前はドゥンケル・ハイト。
烏のような黒い髪と、深緑色の目を持っている。
声が出ない訳ではない。話すことは出来るのだから。
ただ歌わない。
「歌わなくちゃ、貰い手がいなくなるのにね」
周りにいる鳥が囁き、笑う。
実際、歌の綺麗な鳥から貰い手が決まっていく。
ハイト以外は皆、誰よりも早く貰われていこうと日々歌声を磨き、自分を磨いた。
それでも、何と言われようと、ハイトは一瞥くれてやっただけで視線を戻す。
真っ直ぐ前だけを見て、彼女は媚びる事なく、信じられる人を待っていた。
.