連なる世界

□二人の旅人
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 扉を開けると、そこは葡萄畑。撓(たわ)わに実った葡萄の果実が収穫されるのを待っていた。

「わぁ……綺麗だね」

 誰に言うでもなく呟いて、そっと葡萄に触れる。そして、風に揺れる葉の音を聞き、嬉しそうに笑った。

「ありがとう」

 葡萄の木に手を振って歩き出す。
 広がる畑と点在する民家を眺めながらのんびり歩いていると、一軒の農家の前で足を止めた。

「……ここかぁ」

 躊躇う事なくドアを叩く。今夜の宿泊交渉一軒目。断られたら次の家を訪ねるが、最悪の場合野宿になる。しかし、アペリが躊躇う事なくドアを叩くと、たいていの交渉はすんなり通ってしまうのだ。
 暫くして、ドアがゆっくりと開いた。

「はいはい、どちら様?」

 中から出てきたのは、初老の女性。見知らぬ顔に少し警戒しているようだった。
「こんにちは。各地を旅しているアペリといいます。この村に着いたばかりなのですが、一晩泊めて頂けませんか? あ、ジスティも一緒に」

 足元にいた私を抱き上げて笑うアペリを見て、女性は驚いた様子を見せた。アペリに驚いたのか私に驚いたのか、視線が行ったり来たりしている。受け入れるかどうか迷っているようだ。
 アペリはいつもより少し真面目な顔になって、こんなことを言った。

「貴女の家族を助けます」

 もしかしたら一人暮らしだったかもしれない女性にどうしてそんな事を言ったのか、その時は分からなかった。
 女性は、少し考えてゆっくりと口を開いた。

「アペリさん、ね。貴方を信じても良いかしら」
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