連なる世界
□シンフォニア!
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これは、とある港町での話です。
貿易や商工で賑わう町に、旅人はやって来ました。
明るい茶色の髪がふわふわと揺れています。
「わぁ…」
旅人は賑わう人の波を楽しそうに眺めながら、流されるように歩いていきます。
潮の香りが鼻を掠めて、旅人は若葉色の目を細めました。
「ジスティ、見てみて」
斜掛けにした鞄を軽く叩いて旅仲間を呼ぶと、鞄から顔を覗かせたのは黒猫。緑色の目がくるくると周囲を見て、「どこを見るの?」と旅人を見つめました。
「どこをって……町の賑わいをだよ?」
『私には、どこの町でも同じようにみえるけど』
黒猫の返答に旅人はため息をつき、自身が着ているローブで鞄ごと覆って目隠しをしてしまいました。
旅人が歩く揺れで景色が見え隠れして酔いそうです。
「で、次の目的地に行くには海を渡らなきゃなんだけど……」
『魔法使って飛んだら?』
「この世界じゃ、そんなぽんぽん使えないよ。
どこかの船に乗せてもらおう――あ。あの船どうかな」
一隻の船に目星を付け、乗組員の代表と話をするために近付いていきます。
「こーんにっちはー!」
旅人の呼びかけに応えて、船の上から覗く顔がひとつ。逆光で細かな所までは見えないですが、大きな羽飾りの帽子と茶色の髪、右目を覆う眼帯はなんとか確認出来ました。もうひとつ付け足すなら若い。衣装が立派過ぎると言えるほど若いです。
「……彼がこの船の代表かなぁ」
『が、眼帯してたよ!?』
「そんな警戒しなくても大丈夫だよー」
根拠のない緩い言葉が返ってくると、よけいに心配になる黒猫。
少し待つと、眼帯君が普通に会話できる距離まで下りて来てくれました。
旅人は軽く礼をしてから用件を述べます。
「どーもー。
船に乗せてほしいんですけど、代表の人、いますか?」
用件の述べ方も軽かったですね。
「俺が船長だ」
胸張って自慢げですが、旅人は緩く流してますよ。
旅人が「若いですねー」とか言って笑っている横では、心配して見ていた黒猫が、二人の緩いやり取りに安心して――訂正、危機感と緊張感を削がれて、鞄の中に引っ込んでしまいました。