連なる世界
□歌姫の呪い
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たどり着いた町はずいぶん静かだった。
人がいない訳ではない。活気がない訳でもない。
ただ、何かが物足りない。
人がいて、活気があって、みんな楽しそうにしているのに……。
「……そっか。歌がないんだ」
これだけ人がいれば、中には歌い手がいてもおかしくないのだが。歌どころか、音楽が一切鳴らされていない。
「なんでだろうね?」
アペリは首を傾げて笑いかけたが、そんな事、私が知る訳がない。
「ジスティが知らない事くらい分かってるよ」
人を――私は猫だが――からかって遊ぶのが好きなアペリはカラカラと笑いながら近くの店へ入った。
扉が閉まり切る前に私も店内に滑り込む。
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