Heath
□別視点
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「モルト、いるか」
呼ばれて雲の上から体を起こす。覗いてみれば、変わり者の悪魔が女性の魂をひとつ、連れて来たところだった。
ああ、彼女が例の――白髪の老婆かと思ったらまだ十代の少女だった。
「《案内人》みたいなもんだよ」
軽く挨拶をして、さっさと魂を受け取って、裁きの大王様の前まで案内。いつもの仕事。
しかしこの女とんでもなかった。死んでもなお悪魔に願うだなんて! 聞き入れた悪魔の方もどうかしてる。これじゃあまるで想い合ってるみたいじゃないか。そんなことしてもお互いに辛いだけだろうに。
ああ、なんて表情をするんだ。
これから案内しなければならない人を、彼女の想い人から引き離したくないと思ってしまった。
個人の思いでルールに背くことは赦されない。
故人の魂を速やかに案内することが役目。
作り物の笑顔で誘(いざな)う。
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:『Heath春61』のモルト視点。
Heath世界久々に書いた。久々に読んだ。なんていうか辛い。結ばれないでも想い合ってる二人が好き。
ハッピーエンドではない。バッドエンドでもない。
御題:死神は微笑む
何気にモルトも優しい子。