Heath
□お泊り
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【 お泊り 】
「へぇ…外見とそう違わず、中もこじんまりとしているんですね」
今日は皆(カシギ、ナユタ、ユキ)がお泊り。
カシギは家の中を、首を巡らすだけで見て言った。
「文句言うなら来るな」
「誰も文句なんて言ってませんが?」
さっさと追い出したいと思っているシャルトとは逆に、カシギはにっこりと答えた。
「まあまあまあ、鈴の新しいお友達? いらっしゃい」
台所から出て来たお母さん。カシギとナユタを見て「お友達」と解釈した。ここは話に乗っかっておこう。
「《友達》のカシギとナユタ。今日は皆でお泊りしようって話で……」
ちらっとお母さんの顔を見る。思い出しているように目が動いている。指の動きも見れば、何かを数えているのが予想できた。
数え終わるのを待ってから続きを言う。
「……いいかな?」
「ええ。今日はショウも友達の家に遊びに行ってるからね。ショウの部屋も使うといいわ」
「ありがとう!」
「二つ、部屋の確保も出来たことだし――」
二階の廊下、自分の部屋と兄の部屋の間で止まり、皆を見回す。
「――部屋割りしようか」
普通に考えて《男子部屋》《女子部屋》に分かれるものだけど……。
「……お兄ちゃんと一緒じゃなきゃイヤ」
ナユタが駄々をこねた。カシギの腕に絡まって自己主張。
「カシギと一緒の部屋がいいー!」
そんなに主張されてもな……。
でもこのままだと、なかなか話が決まらない。
「カシギはそれでいいの?」
「いつも一緒だからね」
答えは笑顔で返ってきた。
双子な訳だし、生まれた時から一緒なんだもんね。うん。この二人はいいとして――
「シャルトは――」
嫌そうな顔をしていた。
双子から離れて私の袖を掴む。
「……だったら、おれはこっちがいい」
そんなに双子と一緒の部屋が嫌なのか……。
「クロさん、」
ずっと黙っていたユキが口を挟んだ。
「一晩だけ、我慢していただけませんか?」
「なんで」
「一晩だけでいいのです。そちらの――ナユタさんも」
ユキに名前を呼ばれ、身を固くするナユタ。
「一晩だけ、狐の姿でいてください」
「えー」
ナユタも不満の意を唱える。
何だか、どんどんややこしい方に話が……と思っていた私は、思い出した。
ユキは《天使》、シャルト達は《悪魔》。
一緒にいると、互いに影響が出てしまうのだろう。
「じゃ、シャルト達はそっちの部屋使って。ユキはこっちね」
「おい! 鈴!」
うん。ごめんねシャルト。
「一晩だけ我慢して、ね?」
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副題を付けるなら『災難』でしょうか。
渋々シャルトは双子と同じ部屋に入るのでした。