連なる世界

□二人の旅人
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「これでまたしばらくは大丈夫だと……オリアナさん?」

 アペリは、ほうけた顔で甦った老木を見ているオリアナさんの目の前で手を振った。そういえばまだ魔法使いであることは話していない。

『この世界が魔法使用禁止だったら交渉決裂だね』
「そ、そんなことさせないから! いい加減野宿は飽きたし」

 我に返ったのか、オリアナさんの目に光が戻り、今度は涙が溢れてきた。

『??』
「……大切な存在、だったんですよね」

 涙を拭いながら何度も礼を言うオリアナさんに、アペリは、お礼は一泊泊めて頂くだけで十分ですと言った。

「何もないけれど、ゆっくりして行ってちょうだい」
「ありがとうございます」

  * * *

 一晩泊めて貰い、翌日の朝には出立――のつもりが、久々のベットで寝坊したアペリがオリアナさんの家を出たのは昼前だった。

 それからまた何度か世界を渡って、ティムスさんと会い――せっかく葡萄畑のある村に行ったのにワインも飲まずに帰ってくるなんて勿体ない!と言われ(ついでに土産も要求され)、私達はオリアナさんの村がある世界に戻って来た。
 以前来た時と同じように、葡萄畑が出迎えてくれた。そして、果実とは別に甘い香りを嗅ぎ取った。

『これ、ワイン?』
「ジスティはもう匂いが分かるんだねぇ」

 畑から出て、村へ向かう道を歩く。

「あ。あの人も旅人かなぁ」

 アペリが見付けたのは、道のずっと先を歩く人。大きなリュックと乳白色の髪が特徴的だ。

『……もう村を出るみたいだね』
「あの旅人さんはこの村のワインを味わえたかな」
『あれ、オリアナさんじゃない?』
「あ。本当だ」

 風が葡萄の香りを運ぶ。

「オリアナさ〜ん」

 アペリの呼び掛けに振り返った彼女の胸元には、琥珀のペンダントが光っていた。







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