2011.6.12/P20



「俺は何か適当に、あんたを殺したっていう証拠をでっち上げて、城に持ち帰る。その代わり、あんたはここで俺に犯られる」

「なっ……!」

三成は頬を染めて狩人を睨み付けました。そんな条件を呑めるはずがありません。

「貴様、己が何を言っているのか、分かっているのだろうな」

「勿論。で、どうするんです? 俺に殺されるか、俺に犯られるか」

狩人は怒りのあまり身体を震わせる三成をあらためて見下ろします。腕に自信がある狩人は、三成のような若造が怒ったとことで怖くも何ともありません。ただ、怒っていても綺麗だと思っていただけです。

三成は「もう一つ、選択肢がある」と、帯に挟んでいた得物を取り出しました。

「ほう、俺とやろうっていうのか」

狩人は楽しそうに笑いました。その大きな手は、油断無く大刀の柄に振れています。

「俺は石田三成という。貴様、仮にも刃をむけるのならば名を名乗れ」

「ああ、すいませんね。俺は島左近といいます―だが、あんた相手なら刀を抜くまでもないかもしれん」

相変わらずせせら笑う左近の鼻先を、三成の鉄扇が掠めます。

「おっと。気が短いですなぁ、三成さんは」
「! 馴れ馴れしく呼ぶな!」

三成の繰り出す攻撃を、左近は右に左にと刀も抜かずに避けました。決して遅くはないはずの攻め手です。三成は当たらないことに、段々焦りを感じ始めました。それがよくなかったのでしょうか、三成の次の攻撃は大振りになっていました。

「チッ!」

大きな動きを避けられた瞬間、三成は舌打ちしていました。左近は攻撃を易々とかわすと漸く柄に手を遣りました。けれど、それは刀を抜いたわけではなかったのです。

左近は刀の鯉口を切るだけで、三成の鉄扇を弾き飛ばしました。勢いに圧され尻餅をついた三成の上に、左近が獰猛な笑いを浮かべ伸し掛かってきます。

「もう逃げられませんね。大人しく犯されて下さいよ」

「やっ……!」

左近は片手で三成の細い手首を軽々と一纏めにし、抵抗を往なすように唇を奪いました。息苦しさに喘ぐほど、左近の舌が三成の中に入ってきます。よほど噛みきってやろうかと思いましたが、左近の空いた手に肌を撫でまわされると、何故だかそんな気持ちも霧散してしまいました。


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