Memory of Night(BL)
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日曜日。
宵は晃から受け取った住所を頼りに、晃の家に向かっていた。
今は七月の初め。宵は緑色のティーシャツと薄茶のジーンズという軽装だ。
女物の服は、晃の家で用意するという。
しばらくメモと表札を見比べながら歩いていると、三階建ての大きな家を見つけた。
住所を確認すると、どうやらそこが晃の家で間違いないようだった。
「スゲー」
白い、洋風チックなキレイな家だった。
庭が広く、そこには何種類もの花がきちんと手入れされて咲いている。
貴婦人でも住んでいそうな雰囲気だった。
宵は晃の家の呼び鈴を鳴らした。
「いらっしゃい」
中から出てきた晃は、青いポロシャツに白いジーンズ姿だった。シャツはボタンを二つほどはずしていて、そんな着方が優等生と呼ばれる晃にしてはめずらしく感じた。
「今日は親遅いんだ。だから安心して」
「仕事?」
「うん」
晃は宵を、三階にあるという自分の部屋に案内した。
ローマ字で、『Akira』と書かれたプレートのかかっているドアを開ける。
「どうぞ」
招き入れられたその部屋は、ほとんどのものが白とグリーンで統一されたとても清潔感のある部屋だった。
「キレイにしてんなぁ」
「そんなことないよ」
言いながら、晃は後ろ手に部屋の鍵を閉めてしまう。
「じゃあ、始めようか」
それでは早速と、晃は勉強机の一番下の引き出しを開け、何やらごそごそと物色し始めた。
中から、ガムテープとロープ、大きめのはさみを取り出す。
「どれからやる?」
「……女装は?」
「させるつもりだったけど、考えてみたら君の体に合うサイズないんだ。だから今回はいいよ。また機会があったらで」
「ふーん」
もらえる金が減るのは少し残念な気もしたが、女装をしなくてすんだのはありがたい。
宵が晃を見ると、晃は宵に笑顔をみせた。
「――なら、始めるよ。まずベッドの上に座って」
晃は右手にロープ、左手にガムテープを持って、宵に聞いた。
「どっちで縛ってほしい?」
宵は一瞬迷ったように二つを見比べてから、右手を指さした。
「……ロープ」