ア
□負けられないこと
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「ねぇ雲水」
「なんだ。」
「あたしが阿含にも誕生日プレゼントあげたら妬く?」
阿含にも、というのは去年は幼なじみだったからだ。今年は雲水と付き合いはじめたからそのことについて聞いてみた。
「あぁ…少しな」
彼は少し赤くなりながらこたえた。
「そっか。でも阿含は未来の弟だよね?」
「先を見すぎじゃないか?」
彼が微笑してあたしを見た。確かにあと何年か先に結婚すればの話だ。
でもあたしはそんな他愛もない話を雲水とするのが好きだったりする。
「もしかしたら雲水が兄貴になってるかもよ?」
冗談混じりに言ってみた。
「やめてくれ。本当にそうなったら困る。」
「いくら弟が天才だからってあたしを譲る気なの?雲水は。」
「譲るわけないだろ!死んでもあいつにやる気はない」
いつも「あいつは天才」と諦めを口にしていた雲水からそんな言葉が出るとは思ってもみず、不覚にもときめいてしまった。
負けられないこと
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