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□流れ星なんて、いらない
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今日もグラウンドから青春真っ盛りの男子達の声が聴こえる。
雲ひとつ無い空に、5月の温かさが見て取れるようだった。
頬を撫でる風が爽やかで気持ちがいい。


今日もふらりと、足は第2グラウンドへと進んでしまった。
フェンス越しに眺める練習試合の風景の中で一際輝く人。

土煙の中、防具を付けてマスクを被った貴方のことが愛しくてたまらない。
キャッチャーミットに拳を打ち付ける姿に、好きの気持ちが増していくようだった。

「ライト!…よし!」

サードから走ってくる相手走者を見やりながら、声を張り上げる。

よく通った貴方の声が好き。

「ホーム!」

―パンッ!
ライトから一直線にホームへと飛んで行く白球をミットに収めて突っ込んできた走者にタッチする。

この瞬間ばかりは、何時怪我をするのかわからないので、体中に緊張が走るのだ。

「アウト!」

審判の声が聴こえた瞬間に、安堵で緊張の糸が切れる。

2−1 

今回の練習試合も、見事に西浦の勝利に終わった。
勝利の嬉しさに皆が抱き合う。
見ていて微笑ましい光景だ。

最後の挨拶が終わり、ゾロゾロとベンチへ戻っていく中、
貴方はわたしを見つけてやってきてくれた。
きっとみんなと騒ぎたいはずなのに、私を優先してくれる。
そんな優しい所も好き。

「隆也っ。おめでと!かっこよかったよ」
「おう、見に来てくれたんだな。さんきゅ」

タオルを渡して褒めてあげると、貴方は照れたように、だけど嬉しそうに笑った。

「どうせならHR打ってるとこ見せたかったけど、今日は無理だったな」
「あたしは隆也がキャッチャーやってるときが1番好きだからいいの」
「ん、そうっすか。」
「照れてる?」
「照れてねーよ!」

可愛い、そう言おうと思ったけど、その言葉はいわなかった。
だって、本当にかっこいい事を知ってるから。

「でも、次はあたしのためにHR打ってね!」
「おう、任せとけ。」

そう言って頼もしく笑った君の笑顔が、眩しくて。

君とずっと一緒に居られますように。


そう願った。





流れ星なんて、いらない
(だって、私にとっての流れ星は、
あんたのHRなんだから)







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