■novel


□赤と黒
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「何で泣く…。そんなに夜が怖いのか…?」

「べっ、別に怖いわけじゃ…υ」
斎藤の胸に顔を埋めたまま、左之助は反発した。


別に怖いわけじゃない。夜が怖いなんて、感じたコトはない。
でも、じゃあ何でこんなにも涙が止まらないんだろう。

何が自分をそうさせるんだろう。
この気持ちは何だろう…。


「ヒヨッコだな。」

斎藤は優しく左之助の頭を撫でて耳元で囁いた。

「オレが側にいてやる…。」


そう言われ、左之助ははっとした。


あぁ、そうだ…。

そうだったんだ…。



「オレ、夜が怖いんじゃなぃ。悲しいわけでもなぃ…。」
斎藤の背中に回している手に力がこもる。


「寂しいんだ……。斎藤が爆煙の中に消えて行ったあの日から。お前を奪った真っ赤な炎と真っ黒な煙があの夕日と夜の暗闇に重なりあって…。あの時のコトを思い出させる。また、斎藤がいなくなっちまうんじゃないかって……。」

「だから…寂しくて……。もう、あんな思い……したく…なぃ。」

わかったんだ。
オレは、大切な人を二度も失いたくない。。。

まるで、指の間をすり抜けて行くような…。どんなに掴もうとしても、想っても、叶わない…そんな願いを心に置いておきたくない。
「言っているだろう。お前の側にいてやる…。お前とはくぐってきた修羅場の数が違うんだよ。」

「でも!でも…!」

左之助は顔を上げ、すがりつくように斎藤を見つめた。

「阿呆。」

次の瞬間、左之助の唇には斎藤の唇が重ねられていた。

「んっん…。」

左之助は頭の後ろを支えられ、深く…頭の芯まで熱くなりそうなキスに答えた。


「そんなに心配なら、一つ良いコトを教えてやる。」

斎藤は左之助の首筋を指でなぞった。

「斎藤…?」

不安そうにしている左之助をよそに斎藤はソコに口付け、赤い朱を付けた。

「これが消えたら、また付けてやる。それも消えたら、またオレが付けてやる。この約束がオレとお前を離させん。」

そう言いながら、斎藤は左之助の手を取り、その部分に当てがう。
「それも…消えたら?」

そう聞いてくる左之助に斎藤は片方の口の先を少しあげ、フッとずる賢い笑みを見せた…。



+end+





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