短 想い 心U

□私の日常E
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 私は多分、恋愛対象として好きなのだろうと思われる人の家に、良く邪魔してる。
 彼が特に何も言わない事から、毎日のように通い、先日料理を作ったら、買い物係を言い渡されるような出来映えだった。
 それにより、現在私は鮎と大根をスーパーへ買い出しに来た帰りなのだ。

 「あら、久しぶりね」

 声をかけられて振り向けば、彼の友人が立っていた。
 私はぺこりと頭を下げて、返事をする。

 「お久しぶりです」
 「ちょっと時間良いかしら?」

 私を上から下まで眺めてから、彼女は訪ねる。
 私は時計を見てから、小さく頷いた。

 「…買い物?で、帰ったら手料理?」

 私が作る訳ではないが、手料理である事に違いは無いので頷いてみる。
 すると彼女は驚いたように眼を見開いた。

 「…アイツ、貴女の手料理なんて評価したの?」
 「……食べられないこともない?」

 少し考えてから答えると、彼女は納得したように笑った。

 「そっか、それでアイツ最近身辺が綺麗なのね」
 「あの?」

 意味が解らずに首を傾げると、彼女は意味あり気な笑みを浮かべた。

 「アイツにも本命が出来たんだなって事よ」

 全身から血の気が引く気がした。
 そして慌てた。

 「どうしよう」
 「何?まだ言われてなかったの?」
 「はい。そんな人がいるなら、私邪魔者ですよね。置いてある歯ブラシとか片付けないと」

 一瞬静寂が辺りを包み込んだ。
 そして彼女の呟くような言葉が聞こえた。

 「…天然?」

 私は袋に入った鮎と大根を見て首を傾げる。

 「いえ、養殖だと思います」
 「…は?」

 彼女は本当に天然の鮎だと思っているのだろうか?
 ここは正すべきだ。

 「え?ですから、養殖です。今時スーパーで天然物の鮎は、販売されてないと思います」
 「見事だわ」
 「は?」

 彼女は驚いた表情で、それでもどこか嬉しそうに頷いた。

 「この私を一瞬でも固まらせる事が出来るその天然さ!本物だわ!」
 「え?ですから、養殖ですって」
 「良いの、もうわかったから!」

 彼女は私の両肩に手をポンと置いて、力強く頷いた。
 そして、風のように去って行った。

 「だから、養殖ですってば〜」

 この後私が、彼にこの話しをした時の彼の反応は、皆様のご想像にお任せします。
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