短 想い 心U
□私の日常E
3ページ/4ページ
私は多分、恋愛対象として好きなのだろうと思われる人の家に、良く邪魔してる。
彼が特に何も言わない事から、毎日のように通い、先日料理を作ったら、買い物係を言い渡されるような出来映えだった。
それにより、現在私は鮎と大根をスーパーへ買い出しに来た帰りなのだ。
「あら、久しぶりね」
声をかけられて振り向けば、彼の友人が立っていた。
私はぺこりと頭を下げて、返事をする。
「お久しぶりです」
「ちょっと時間良いかしら?」
私を上から下まで眺めてから、彼女は訪ねる。
私は時計を見てから、小さく頷いた。
「…買い物?で、帰ったら手料理?」
私が作る訳ではないが、手料理である事に違いは無いので頷いてみる。
すると彼女は驚いたように眼を見開いた。
「…アイツ、貴女の手料理なんて評価したの?」
「……食べられないこともない?」
少し考えてから答えると、彼女は納得したように笑った。
「そっか、それでアイツ最近身辺が綺麗なのね」
「あの?」
意味が解らずに首を傾げると、彼女は意味あり気な笑みを浮かべた。
「アイツにも本命が出来たんだなって事よ」
全身から血の気が引く気がした。
そして慌てた。
「どうしよう」
「何?まだ言われてなかったの?」
「はい。そんな人がいるなら、私邪魔者ですよね。置いてある歯ブラシとか片付けないと」
一瞬静寂が辺りを包み込んだ。
そして彼女の呟くような言葉が聞こえた。
「…天然?」
私は袋に入った鮎と大根を見て首を傾げる。
「いえ、養殖だと思います」
「…は?」
彼女は本当に天然の鮎だと思っているのだろうか?
ここは正すべきだ。
「え?ですから、養殖です。今時スーパーで天然物の鮎は、販売されてないと思います」
「見事だわ」
「は?」
彼女は驚いた表情で、それでもどこか嬉しそうに頷いた。
「この私を一瞬でも固まらせる事が出来るその天然さ!本物だわ!」
「え?ですから、養殖ですって」
「良いの、もうわかったから!」
彼女は私の両肩に手をポンと置いて、力強く頷いた。
そして、風のように去って行った。
「だから、養殖ですってば〜」
この後私が、彼にこの話しをした時の彼の反応は、皆様のご想像にお任せします。