BSR(novel)

□華<アナザーストーリー>
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『・・・・け・・・佐助・・・・』

またあの子が泣いている。

『弁丸様、どうかなさったのですか?』

すぐに弁丸様の下へ急ぐ。

いつの間にか弁丸様の子守というか
守役というか
俺がまかされるようになっていた。


俺もまだ忍び見習いの身なんだけどな・・・・。


年が近いってことで
周りから何故か押し付けられるようになった。


まだ5歳ぐらいの弁丸様は
よく父上母上を探しては
すぐ館から追い出されては泣いていた。

義母による愛情は受けていたが
本当の両親の愛は知らず。

まぁ、自分もそうだけど・・・・
まだ弁丸様より俺は年上だから
両親の愛がなくてもつらくはなかった。


「佐助・・・・某はいらぬ子なのか?」

泣きじゃくりながら
俺の着物のすそをひっぱる。

子供といえど
弁丸様は力が強かった。

グイっとひっぱられ
身体のバランスを崩しそうになった。


「何故そのようなことを
考えられるのですか?」

頭を撫でながら弁丸様を見つめる。

「だって・・・・だって某に
全然あってくれないのだ。
会いに行っても追い帰されて・・・・
顔だって・・・・忘れてしまいそうなぐらい・・・」


涙がとめどなく流れている。

その涙を持っていた手ぬぐいで拭きながら

「弁丸様は男でございましょう。
男というのは皆の前で
涙を流してはいけませぬ」


「でも・・・・さみしくて」

「それでもです。
それに耐えてこそ
真の強い男になれるというもの。
それに弁丸様には愛情をそそいで下さる
義母様がいらっしゃるではありませんか。
その方は弁丸様のことかわいがってくださるではありませんか。

それに俺もいつも側にいます。」


優しく泣いている弁丸様を抱きしめる。

まだ胸の中で
ヒックヒックと泣いておられる。


「・・・・・佐助はずっと某の側に
いてくれるのか?」


小さな手が俺の着物をぎゅっと握り締めている。

「えぇ、あなた様が望んでくださるのならば、
この佐助、弁丸様にずっと
おつかえいたします。」


「絶対だぞ。佐助。


ずっと側に・・・・・。」
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