BSR(novel)

□銀の風
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何故我があのような言葉を発したのかはわからぬ。

だが
何か長曾我部と
話をしたかったのかもしれぬ。


長い間瀬戸内にて
争いあっていて
我の中で何かが変わり始めているのやもしれぬ。



通した部屋は
我がよく使用する茶室。

五畳ぐらいの小部屋。



湯を沸かし
茶器を温める。

静かな時間。
お互い一言も言葉を発さず
ただ黙々と。


「毛利、あんたが自ら茶をたててくれるのか?」


茶筅を持つ手が止まる。

「我のでは不服か?」

「いや、そういう意味じゃなくてよ。ほら、他の下の奴らがやるかと思って」

笑いながら我の肩を叩く。
軽めに叩いているつもりだろうが、なかなか重く痛い。

「長曾我部、痛いぞ」

「あ!!わりぃわりぃ!!
いつもあいつらにするみたいにやっちまったな」


そういって叩いた場所を今度は撫で始めた。

気色の悪い。

「やめぬか。茶がたてられぬではないか」


「わりぃわりぃ!頼むぜ、毛利」



静かな空間。
茶をたてる音だけが聞こえる。


戦で互いに刃を交えている相手がすぐ側にいる。
自分とは正反対の性格の男。
時折、この男の性格が羨ましく思えることもある。
だが、自分には成さねばならぬ夢がある。
そのためには
どんな犠牲を出しても
決して崩れてはならない。
皆を道からはずれぬよう、
我が采配を乱さぬよう。
どんなに冷酷になろうとも
それを叩かれようとも。

それが我が道。


ただそれだけが
生きがいのようになっていた。
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