可愛い弟子
□海と隠者と
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海と陰者と
構内のざわめきの中を一人の少年がまわりを見回しながらも、驚くべき速さで駆け抜けていく。
肩にかけた大きなボストンバックの重さを感じさせない動きで、人の間を器用にすり抜け、ぶつかるどころか、服の端が触れる事さえない。兼一が、身に着けた制空圏で無意識の内に避けているからだ。
しばらくすると、改札口の近くにたむろっている奇妙な集団に向かって走り寄る。いつもどおり掲げられた旗には《新白連合》の文字。
「おーい、みんなー!」
「遅いぞ兼一!武田や宇喜田はとっくに来てるぞ」
「呼び捨てにすんな!」
「は〜い、兼一くん。グッモ〜ニン☆」
「おはようございます、武田さん、宇喜田さん!」
新島を筆頭に武田や宇喜田、松井ほか新白連合のいつもの面子がそろっている。
「すいません。岬越寺師匠が朝のランニングだけでもしていけって言うんで、走ってたら遅くなっちゃって」
「いいんじゃな〜い?電車には十分間に合うしね」
「では諸君、第一回新白連合夏季合宿にこれより出発する!相変わらず強情っ張りのハーミットは来なかったが、今回はジークの別荘ということもあって、トールも参加が決定している。二人には先に向こうでいろいろと準備させている。楽しみにしておけ!」
「男ばっかで海に行って何が楽しいんだ」
「確かにねー。兼一君、ハニーはやっぱり来ないのか〜い?」
「こればっかりは、僕にもどうにもなりませんよ。3日も美羽さんがいないと、梁山泊が今以上に無法地帯になりますから」
「まあ、今回は現地調達するしかないみたいだね。ねえ兼一君、一緒にナンパしてみな〜い?」
「僕がですか!?した事ないですよ!」
「何事も経験って言うじゃな〜い。それにボクのかっこよさに、キミの可愛さが加われば無敵だよ〜。一夏のアバンチュールしてみたくない?」
「うっ!」