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□天国の囚人
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天国の囚人





シオンが俺を殺すための命令を出していた。


けれど、それは王として当然の事で、俺はシオンを責めるつもりはなかった。なのに、あいつは俺がそれを知っていたことを言った時、今にも泣きそうな顔をしていた。

シオンはその命令を出すとき、どんな思いをしただろう?どれだけ苦しんだろう?諦めることも出来ずに、どれだけ後悔し続けているんだろう?

俺はいい。とっくに慣れっこになってしまったから。けれどお前は駄目なんだ。
良き王であろうとするお前と、シオン・アスタールの間で心は悲鳴をあげている。
お前は優しくて正しいことを成し遂げようとする心を持っているから。そのためならどんな努力や犠牲も厭わないから。
なのにお前はそうすることを恐れているんだ。それが歩くには細すぎる尾根の道だと知っているから。踏み外せば、全てを道連れにした滅びがあるのを知っているから。

なら、俺はお前の元に戻ろう。
王としてすべてを語らなくても。王として俺を利用していたとしても。
お前の心にあの頃のシオン・アスタールがいるかぎり、一緒にこの国を変えようと言ったお前がいるかぎり、俺はお前のそばにいるよ。

こんな、化物と言われた、本当の化物である俺に、それでも手を差し延べたのはお前だから。

もうその手が見えなくても、もう俺の声が聞こえなくても、お前がどんなに変わってしまっても、俺は怖くなんかない。


だから、笑ってくれよシオン。
いつか、昼寝だけしていればいい俺たちの王国で、城を抜け出して一緒に昼寝をしよう。

いつか、きっと。
必ず。






end

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