マイナー小説

□見えない尻尾
1ページ/2ページ

見えない尻尾




「全く何時まで入っているつもりだリロイ」


バスルームのドアを開け、相棒が顔を出す。


「勝手に入ってくんなよ」


手をヘラヘラと振ってそちらを見ずに追い払う。
見えなくても彼がむくれた気配がする。
しばらくぶりに人型をとった相棒を見てみたい気がしないでもなかったが、結局目は伏せたままにする。
ざまあみろ。
相棒は鼻を鳴らすとドアを閉めた。


何時ものごとく夜をまたいで大立ち回りを演じた。体が訴えるままに宿に付いた途端眠りに落ちたが、返り血が乾く不快感に眠りが深くなる前に目覚めた。
空は白々と言うにはまだ暗く、ついぞ起きた事がない早朝の空気は夜以上に冷えていて。実際寝直すにも問題がありすぎたので、俺は朝風呂に入る事にした。
寒い時はバスタブに湯を張って入る弥都式の方が好きなので、シャワーで体を洗ってから、少し温い湯に入る。
換気窓以外の照明がないバスルームで水音だけが反響する。
暴れ回った体は仮眠を取っても眠っていなかったかのように熱いままで、肌を滑る湯がひどく心地よかった。張り詰めた筋肉の緊張が体から流れ出して行くのを感じる。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ