マイナー小説
□吐き出される炎
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吐き出される炎
口付けた場所から苦みが口内に広がっていく。
昔一番軽いと薦められた銘柄だが、相変わらずうまいとは思えない。
最近は咳込まなくなったが、それもきっと俺の獣化が進んだからだ。
とてもじゃないがあいつのようにプカプカ吹す気にもなれず、咥えたまま燃え尽きるのを眺める。
致死毒さえ物ともしない体は、いつか、紫煙の苦みも中和していくのだろうか。
心は今もじくじくと血を流し続けている。なのにその痛みは和らいでいく。
血はどんどん流れて、痛みはどんどん引いて、俺は何も感じない強さを手に入れていく。
きっとあいつを殺しても、もうあの時の様に泣く事は出来ないだろう。
そうなったとしても、俺は今の相棒から隠れて煙草を吸い続けるだろう。
今この瞬間だけは苦みを、忘れかけた胸の痛みに変えられるから。
サヨウナラ、
可哀想な俺の相棒。
end