物語

□兆し
1ページ/5ページ

風が時間を知らせてくれた
ひんやりとした午後の風
黄昏を目の奥に映し、俺は体を起こした
「そろそろ行くか」
伸びをして立ち上がる
黄昏が夜の訪れを知らせている
長い影は闇を思わせるほど暗く深かった

「今日も何も無かった、きっと明日も何も無いんだと思うよ」
一人で歩きながら、空に向かって声を放つ
街の光にも負けず、自らを主張する星が幾つかあった
「わかってる、必ず来るんだろ?俺はそれを待ってるんだから」
俺にしか聞こえない声
誰にも教えたことのない、俺の特別な能力
星の声を俺は聞くことができる
誰も信じてくれないが、現に聞こえているのだから
これは俺だけの特別な能力なんだと自分の中に秘めることにした
「近づいてる?この前はまだ先だって言ってたのにな」
苦笑しながら歩き続ける
期待はしていないが、星達が言うことを俺は信じていた
変化の兆しが目の前に来ている
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ