殺さないの?わたしがそう呟くと、目の前にいる忍は眉をひそめた。忍なのに敵であるわたしを殺すことを躊躇ってるのか、この男は。だとしたら随分甘い忍だ。わたしは主人に仕えるため、小さい頃から忍としての訓練を受けてきた。自分でも結構強い方だと思ってたし、今まで誰にも負けたことがなかった。この男に出会うまでは。それなのになんなんだこの男は。わたしより強いくせに、やろうと思えばいつだってわたしの命なんて奪えるくせに、一向にとどめを刺してこない。それどころか彼は、悪い。と本当に心からの謝罪を述べるのだ。


「なんで、殺さないの!?なんで、謝るの!?」


わたしはあなたに負けたはずでしょう?


「痛かったよな、ごめん」


なんで、なんで。わたしは敵なのに。あなたの命をとろうとしてあなたに負けた愚か者なのに。どうして謝るの?わけわかんない。彼の言葉に怒りを覚えると同時に、本当に悲しそうにいう彼にわたしの瞳から一粒、涙がこぼれた。それを彼は人差し指で拭ってくれるが、涙は一向に止まってくれそうにはない。


「もう戦える力が残ってないアンタの命をとる必要がどこにある?」
「わたしは敵よ…!」
「敵だねぇ。だけど、」


戦えないアンタは敵じゃなければ、忍でもない。ただの綺麗な女の子だ。彼、猿飛佐助はそう言うとその大きな手のひらでわたしの頭を撫でる。その手は、わたしに与えられるにはあたたかすぎた。どうしていいかわからなくなったわたしは、思わず振り払う。


「やさしく、しないで………!」


彼はわたしの前に現れるには少し、やさしすぎた。今まで忍として無情に生きてきたわたしには彼はやさしすぎたのだ。わたしにとって、やさしさはとても痛いもの。付けられたいくつもの傷なんかよりもずっとずっと。


「やさしくされるのが苦しい?」


図星だ。やさしくされるのが苦しい。今まで、やさしさに触れることができなかったわたしにはやさしさなんて苦痛にしかならなかったのだ。でもそれよりも。それよりも、苦しいことは、


「苦しいと思ってしまう自分がいることが一番、苦しい…!」


彼のやさしさに触れて、自分の不甲斐なさを実感して、もうわたしの心は止まってくれそうになかった。感情が暴走して泣き叫ぶ。わたしにない、やさしさという強さをもつ彼がうらやましいくて仕方ない。だけどそれを言葉にすることもできなくて。わたしはただ涙を流すことしかできなかった。


「泣きたいときは思いっきり泣けばいい。忍だって人間なんだから」


彼の手があたたかいのも、やるせなくて噛んだ唇から出てきた血があたたかいのも、結局は生きてるからであって。それにはわたしと彼との違いなんてないことも本当は全部知っていたんだと思う。きっと、忍である以前に人間であるわたしたちは、やさしさに触れて初めて、強くなるものだから。だとしたらわたしが彼の隣に立てる日も、そう遠くはないのかもしれない。







それはわたしの光であって、同時に愛しさの対象でもあったの



ほたるさんから頂いた素敵佐助です〜vv
やさしくしないでとかかなり胸キュンしましたよアタシvv
私の微妙政宗とこれでは交換にならん気が…わらしべ長者ってこんな気分ですね絶対(笑)
ほたるさん有難う御座いますね♪


2007.12.3.Mon


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